わたしの可愛い御主人様

 ハン理事から、ホジュン財団の病院に行くように命じられた。
 血液検査をしてこいというのだ。
 わたしは至って健康体なので驚いた。それに、ハン理事の使用人はすべて一年に一度は健康診断を受けるよう義務付けられている。今年も春に受けたばかりだ。何の問題もなかった。
 よくわからないが、命令は絶対なので病院へ行ってきた。特別室に案内されて個室で検査を終わらせた。
 結果は1週間後と言われ、再び来たのが今日だ。
 医者は言った。
「何も問題ありませんよ」
「はぁ」
 そもそも検査の目的を知らないのでわたしは困惑した。
「あの、検査項目を見せていただけますか?」
 そう言うと、医者はとくに何も気にせず、印刷された紙を一枚わたしにくれた。
 そのままではわからなかったので、インターネットで検索してみた。
「!?」
 どれもこれも性病の検査だった。
 問題なくてほっとした。が、いったいどういうことだろう!?
 わたしは病院からの帰り道、考えを巡らせた。
 わたしたちはいつもセーフセックスをしている。ただまぁゴムをしていても可能性がないことはないだろう。
 わたしに性病の検査をしてこいということは、ハン理事に何らかの症状が出たということなのだろうか。ここ最近はずっとわたしとしかしていなかったように見えたのに、だとすると、他の誰かと寝ていたということなのだろうか?
 ハン理事がもし本当に性病にかかったのなら心配だが、それと同時にとてつもない悲しみが湧き上がってきた。
 他にも懇ろの男がいたのか。
 しかも性病持ちのタチの悪い奴。そんな奴とわざわざ寝なくても……。
 わたしは自身の力不足を感じて、悔しくなった。
 いっそ今度は抱き潰してやろうか。他の男なんていらなくなるくらいに。
 いや、冷静になろう。今はハン理事の体調が第一だ。
 邸に戻って、通常の仕事に戻った。今日は外の見回り担当だった。
 夜までのシフトだったが、終了間際、ハン理事に呼ばれた。
 わたしは複雑な気持ちで寝室へ向かった。
「病院は行ってきたか?」
 開口一番たずねられ、わたしは頷いた。
「はい、何も引っかかりませんでした。問題ないそうです」
「そうか……」
 ハン理事はたいして驚いた様子もなかった。
「これは俺の結果だ」
 そう言って、わたしと同じ検査項目の紙を見せてきた。
「見ろ、俺も引っかからなかった」
「えっ」
 俺は驚いた。
 だったら何でわたしに性病検査させたんだ?
 いまさら急に気になったとか?
 それなら別に全然良いんだが、性病持ちのタチの悪い男はいないんだろうか。
 本当に? なんだ……。
 あっさり身も心も楽になって、自分が嫉妬にとらわれていたことに気づいた。
 雇われの身でありながら、主人に嫉妬などおこがましい。
 それだけ俺はこの人のことで頭がいっぱいなんだなぁとぼんやり思っていたところ、ハン理事が言った。
「なんで驚いてるんだ。俺がまさか性病持ちだとでも思ったのか?」
「め、滅相もございません」
「当たり前だ」
「はい」
 検査結果を片手に自慢気にしていたハン理事は、いきなり小声になって言った。
「……その、だから、俺の言いたいことはわかるだろう?」
「え?」
 さっぱりわからない。
 お互い性病検査をしたことで、安心してセックス出来ることはわかった。
 それ以外に何があるのだろう?
「わからないのか!? こいつめ……」
「申し訳ございません!」
 明らかにハン理事はわたしにイライラしている。
 困った、どうしよう、正解がわからない。
 冷や汗を掻いて悩んでいるわたしは、ようやくあることにたどり着いた。
「まさか……その、ハン理事がおっしゃいたいのは……」
「なんだ、言ってみろ」
「ナマでやりたい……とか?」
 口に出したら、ハン理事の顔が真っ赤になった。耳まで真っ赤だ。
「…………そのとおりだ」
 ぼそっとハン理事は答えた。
 わたしはぽかんと口を開けた。
「赤ちゃん出来ちゃいますよ?」
 思わず口をついて出た言葉に、ハン理事は目を向いた。
「はぁ?????」
「冗談です」
 慌てて付け加える
「お、おまえが冗談を言うのは初めて聞いたぞ。びっくりさせるな」
 ハン理事は半ギレ状態で捲し立てた。
「おまえが、気になるだろうと思って手順を踏んだんだ! 悪いか!」
「とんでもございません。お気遣いいただいて有り難いことです」
 わたしは慌てて頭を下げた。
「わ、わかればいいんだっ」
 ハン理事は真っ赤になって唇を噛んでいる。
 か、かわいい。
 ナマでやりたいと思ってくれるのもかわいいし、それを言い出せなくてまわりくどいやり方をするのもかわいい。
 ちょっとでも疑ったわたしが馬鹿だった。ハン理事はこんなにわたしを求めてくださっているじゃないか!
「さっさとシャワーを浴びてこい!」
「承知しました」
 わたしは素早く浴室を借りた。
 シャワーを浴びながら、今夜はいったいどうやってハン理事を抱いて差し上げようか考えていたら、何もしていないのにゆるく勃起した。
 戻ってきたバスローブ姿のわたしを見て、ハン理事はぎょっとした。
「もう固くなってるのか?」
「はい、ハン理事のことを考えていたらこんなになってしまいました」
「しかたのないやつだな」
 こころなしかハン理事は嬉しそうに言った。
 わたしは彼に近づいて、そっと抱きしめた。
 軽くキスをする。ついばむように、何度も。
 おとなしくされるがままのハン理事に胸がいっぱいになって、わたしは完全にスイッチが入ってしまった。
 片手で抱きしめたまま、もう片方の手でハン理事のお腹をさわった。
「なんだ?」
 不思議そうに聞くハン理事に、わたしは囁く。
「いつも、ここまで入っているの、わかりますか?」
「!」
「このあたりをナカからトントンすると、全身をくねらせてよがりますよね?」
「な、何言って……っ」
「ナカでイケるようになった人は、そのうちここを外から撫でるだけでもイケるっていうの、ご存知ですか?」
 わたしはお腹の下の方を撫でながら続ける。
「そ、そんなわけないだろう!?」
 言い返しながらも、ハン理事は体を硬直させていた。
「ここ、ハン理事の大好きなところ、撫でてさしあげましょう」
「……あっ♡」
 わたしはハン理事の耳の中に息を吹きかけるように囁いていた。
「ここをナカからグリグリされるのと、思い切り突かれるの、どっちがお好きですか?」
「んっ♡ グリグリされるの♡ 好きぃ♡」
「じゃあ思い出してみてください。わたしのデカマラがあなたのここをグリグリして、奥の方まで開かれるのを」
「……あっ♡ んっ♡ なんか♡ ……へんっ♡」
「カリの部分もここに当たって、ゴリゴリされるの、お好きですよね?」
「……へんな♡ かん、じっ♡ うぅっ♡♡♡」
 ハン理事は立っていられなくなってわたしの腕の中でしゃがみ込んだ。
「はぁ……、はぁ……、は、ぁ……っ」
 全力疾走した後の息遣いのように呼吸する。
「あぁ、軽くイッてしまいましたね。大丈夫ですか?」
 わたしはハン理事の脇に両手を差し入れて抱き起こした。そのままベッドの上に仰向けに寝かせる。
「まだまだ、今夜はこれからですよ?」
 わたしが言うと、ハン理事はぼうっとした目でわたしを見つめた。

 一度イッたので、イキ癖がついてしまったようだ。
 小さな乳首をぎゅっとつまんだだけで、ハン理事はまた軽くイッてしまった。
「ひ、ひぃん……♡」
 ハン理事は苦しそうに肩で呼吸をする。
「今日は一段と感じやすいですね」
「うぅ……おまえのせいだ……」
「そうですね、わたしのせいですね。申し訳ございません」
 誤りながら、ちんぽと尻の穴を同時に弄り始めた。
 わたしより前にシャワーを浴びて準備していたらしいハン理事は、穴の中にローションを溜め込んでいていやらしく膨れていた。
「あ♡ あ♡ もう♡ いいからっ♡ 挿れてくれっ♡」
 急かされて、わたしはバキバキに張り詰めたデカマラをハン理事の脚の間に擦り付けた。
「承知しました。失礼します」
 わたしは礼儀正しく、しかし初めてゴムをつけずに挿入して差し上げた。
 すごい感覚だった。
 まとわりつく肉壁がきゅうきゅうと狭まる。気を抜いたら射精してしまいそうだ。
「あっ♡ 入って♡ るぅ♡ お腹まで♡ 来てる♡」
「はい、わたしたちは今直接触れ合っています」
「あぁっ♡」
 ハン理事が感慨深げに喘ぐ。
 わたしはハン理事のお腹に手を当てた。
「あっ♡」
 ナカで自分の先端が当たっているのが手のひらに伝わってくる。
「ほら、ここまで入ってますよ」
 奥の、こつんとぶつかるところを、ぐりぐりこね回す。
「ひぃ♡ いぃっ♡ んっ♡」
「ここを上から押すと、気持ちいいでしょう?」
 腹の上からさらにやさしく押して上げると、ハン理事は下瞼に涙を浮かべた。
「あぁっ♡ やっ♡ それぇ♡」
「イヤですか?」
「よ、よすぎるぅ♡ うぅっ♡」
「それなら良かったです」
 わたしは容赦なく、中と外からハン理事をグリグリ追い詰める。
「あぁぁっ♡ はぁっ♡ も♡ イク♡ イッちゃうっ♡♡」
 ハン理事が限界を訴えるので、わたしはいっそうナカをこね回した。
「はぁぁーーーーっ♡♡♡」
「わたしも、出そうです。中に出していいですか!? 出ます……っ!」
「あぁぁっ♡ すごいっ♡ 赤ちゃんできちゃうっ♡」
 意識のはっきりしない状態でハン理事がそう言うので、わたしはたいそう興奮した。
「えぇ、ハン理事、孕ませて差し上げますっ」
「あぁ――――っ♡♡♡」
 わたしは精液をハン理事の中に思いっきり吐き出した。
 その衝撃にハン理事は震え、意識を失った。

「大丈夫ですか? ハン理事」
 心配して頬を撫でると、ハン理事は目を開いた。瞼にはまだ涙が残っていて目が赤い。ひどく色っぽい姿にわたしは再び勃起しそうになる感覚をぐっと押し殺した。
「……ん、中にいっぱい出たな……」
「は、はい」
「すごく良かった……」
 うっとり言うので、わたしはもう我慢できなくなった。
「あの、もう一度しても?」
「ん? あぁ、ちょっと休憩させてくれ、その後にまたしよう」
 ハン理事は優しい声で言って、わたしの首に腕を絡ませて抱きついた。
「おまえとの赤ちゃんが、ほんとに出来たらいいのにな」
 そう耳元に低い声で囁かれたので、わたしは唇を噛んでじっと幸せを噛み締めた。

おしまい
 
 

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