1505年、朝鮮王朝には燕山君という王様がいました。
王様は残虐さと好色で知られ、一万人もの女人を召し上げたと言われております。
ある日、王様はとある噂を耳にしました。
一人の若者が、「王様がどれだけ女人を集めようと、真の快楽を知る由もない」と吹聴しているというのです。
王様は激怒して、その若者を呼びつけました。
その若者――名も伝えられていませんが、大変凛々しい顔立ちをしていたという武官は、王様を前に怯みませんでした。
「余が、真の快楽を知らないとのたまったのはおまえか!」
「はい、わたくしでございます」
「無礼者め! 余がどれだけ女人を抱いたか知っておるのか」
恫喝されても、その武官は堂々と言い返しました。
「数多の女人を抱いたとて、それがなんになりましょう? わたくしなら、王様に真の快楽を教えて差し上げることができますのに」
「ぐぬぬ……!」
王様は、武官の言う真の快楽とやらがとても気になりました。
「もったいぶるな! 今すぐ教えろ! それが余の知っている快楽なら即座に八つ裂きにしてやるぞ」
「今すぐは出来ません。夜に閨でもう一度お呼びください。準備をして参ります」
「ふむ……それならばよかろう。今夜、余の閨に参れ!」
王様は一旦武官を帰しました。
それから夜になるまでそわそわして、落ち着きませんでした。
日が暮れると、早々に閨に籠もり、武官の男を待っていました。
男は、家臣たち皆が寝静まった頃現れました。
「早う、こっちへ来い! 準備はしてきたんだろうな!」
「もちろんです、王様」
「余は何をしたらいいんだ!?」
「では、裸になって、四つん這いになって尻をこちらに向けてください」
王様は、勢いよく漢服を脱ぎました。
真っ裸になって布団の上で素直に尻を向けました。その素直さと無邪気さに、武官はこっそり笑ってしまいました。しかしすぐに真顔に戻り、持参した小さな瓶を手にしました。
瓶を空け、手のひらで上に中身の香油をすくいとります。手のひらの温度で香油を温めてから、王様の尻の穴に撫でつけました。
「んぅ!?」
王様はぎょっとして振り向きます。
「しばしの間、我慢なさってください。快楽は、苦痛の後に来るものです」
「そ、そうか……?」
「はい、じっとしていてください」
武官は指の腹で王様の尻を押し広げるように何度も撫でました。
「へ、へんな感じだな……」
「王様、女人にこうしてもらったことはないのですか?」
「あ、あるぞ、このくらい」
明らかに王様は嘘をついていました。しかし武官は何も言わずに、尻の穴に中指の第一関節を押し込みました。
「!?!?」
「痛いですか?」
武官はたずねました。
「い、痛くはない。苦しい、気はするが」
「今だけです。もう少し我慢なさってください」
武官はゆっくりと指を中へ侵入させていきます。
しだいに指を中で回すように動かし始めました。
「う、んっ、やっぱり変な感じだ……、うーん……」
唸る王様は、しかし、突然甲高い声を上げました。
「あぁっ!?♡」
自分の声にびっくりして、王様はまた振り向きました。
「な、なんだ? 今のは!」
「どうかなさいましたか?」
「い、今、身体に稲妻が走ったぞ」
驚いて言う王様に、武官はそっと微笑みました。
「ではここが王様の快楽の源なのでしょうね」
「源だと!?」
王様は呆然としました。そんなところに快楽の源があるなんて思わなかったのです。
「ではもう一度……」
武官が中の指でそこを押すと、王様の身体はびりびり痺れます。あまりにも強烈過ぎて、気持ち良いのかどうかさえわからないくらいです。
武官は香油を足して、王様の中を潤わせます。そして挿入する指を増やし、中でバラバラと動かし、不規則な刺激を与えました。
「あっ♡ あっ♡ なっ♡ なんだ♡ それは♡」
「快楽の源を按摩しているのです、王様」
「あっ♡ 按摩!?♡ あんっ♡ あんぅ♡」
いつのまにか王様の魔羅は固く上を向いていました。
触れてもいないのにこのような状態になって、今にも爆発しそうです。
武官が油でぬめる指を動かすたびに、ぐちゅっぐちゅっという音が部屋に響きます。
「あっ♡ あぁっ♡ 出るっ♡ 出したいっ♡ 出したいぃ♡」
こみ上げる射精感に我慢できなくなった王様は、自分で魔羅を扱こうとしましたが、武官がその手を押さえつけます。
「いけません、王様。我慢なさってください」
「で、でもっ♡ あ♡ あぁぁっ♡♡♡」
とうとう王様は手で触ることもなく、精を吐き出してしまいました。
「はぁ……っ、はぁ……っ、なんだ、今のは?」
「王様、ご気分はいかがですか?」
武官に問われ、王様は正直に答えます。
「……よ、良かったぞ。これが真の快楽か?」
「いいえ、違います」
「何だと!?」
王様は驚きました。
「これはまだ準備に過ぎません。真の快楽は準備を重ねた後にやって来ます」
「なんということだ。これでも十分なほど気持ちよかったというのに」
王様は今しがたの快楽を思い出してうっとりしました。
「また、準備が必要なのか?」
「はい、そうです」
「それでは明日も来るが良い」
「仰せつかりました」
武官はうやうやしく、その夜は帰っていきました。
王様はその後ずっとぼんやりして、いつのまにか眠ってしまいました。
翌日約束通りその若い武官はやって来ました。
待っていた王様はいそいそと彼を迎え入れました。自ら漢服を脱いで尻を向け、脚を開くその姿に、武官はつい笑顔になってしまいます。
そして昨日と同じように尻の穴に指を挿れ、中をよく按摩してあげました。
武官の指使いは上手く、王様はやはりすぐに精を吐き出してしまいました。
それから毎日、武官は閨に呼ばれます。
変化があったのは、王様の方でした。
なんと、快楽がだんだん大きくなっていくのです。
最初は指を挿れるときにあった抵抗感も、次第になくなっていきました。
指を挿れられたときから充足感があり、中のあちこちを押されても気持ちよくなり、快楽の源を押されると稲妻が走ります。中をよく按摩され、ずっとしていて欲しいのに、射精管が募り、精を吐いてしまいます。
王様は、昼間でもその快楽のことを何度も何度も思い出すようになりました。
思い出すと、自慰をしたくなるのですが、それは武官の男により禁じられていました。
しないほうが、真の快楽に近づくというのです。
王様は恐ろしくなりました。今でもこんなに気持ちが良いのに、あれを超える真の快楽とはいったいどんなものなのでしょう。
もちろん諦めるような王様ではありません。ただ、武官がやってくるようになってから、閨に女人を呼び込むことはなくなっていました。世間では運平と名付けられた宮廷に召し上げる女人を集める計画が遂行されているところでしたが、当の王様は、女人よりも真の快楽のほうに夢中になっていたのです。
「あっ♡ あっ♡ んっ♡ あんっ♡ あっ♡ 出るっ♡♡ 出るぅっ♡♡♡」
ある日王様は、いつものように精を吐き出そうとしました。
ところが、何か変です。
「えっ♡ あぁっ♡ なに!?♡ へんっ♡ へんになるっ♡♡♡」
いっこうに精液は魔羅から出ないのに、全身が硬直し、快楽に頭の先から爪先まで貫かれたように痺れました。その状態はしばらく続きました。
「あぁぁーーーー♡♡♡ あぁ……♡」
ようやく波が収まり、布団に突っ伏した王様に、武官は言いました。
「よくできましたね、王様。いっそう真の快楽に近づきましたよ」
「こ、これはいったい……?」
「中だけで気をやったのです」
「気を……? 女人のようにか!?」
「そのとおりです」
王様はたいそう驚きました。
射精をしなくても、激しい快楽が長く続くようになったのです。
それからは毎晩、尻の穴をいじられるたび、気をやることになりました。
強すぎる快楽に涙が出そうになります。
それに、昼間に自慰をしたくてしかたありません。
とうとう王様は、武官の男に乞いました。
「た、たのむ。尻の穴の奥を按摩してくれ。奥のほうが疼くのだ」
「それは困りましたね、王様」
武官は凛々しい眉を下げて言いました。
「わたしの指では王様の欲しい奥の方まで届きません」
「じゃあどうすればいいのだ!? 腹の奥が切なくて、どうしようもない!」
「あぁ、それは仕方ありませんね。わたしの魔羅なら届いて思い切り掻いてさしあげるのですが」
「魔羅だと!?」
王様が驚いていると、武官は自分の漢服を脱ぎ始めました。
すると、男の魔羅が飛び出してきて、王様は目を丸くしました。
それはそれは、大きく立派な魔羅だったのです。
「どうですか、これなら王様の切ないところを突いて差し上げられます」
「た、頼む! やってくれ!」
王様は、男に尻を向けました。
武官の男はにやりと笑うと、香油をたっぷり王様の尻の間に撫でつけ、大きな魔羅をあてがいました。
「挿れますよ」
「はぁっ♡ あっ♡ あっ♡ 入って、くるぅ♡ 太いのが♡」
指よりも何倍も太いものが王様の中に入っていきましたが、毎晩慣らしていたため受け入れることが出来ました。ずるずると魔羅は中へ進入し、王様の言っていた奥の方まで届きます。
「あっ♡ そこ♡ そこだっ♡ あぁっ♡ いいっ♡ あっ♡ 抜くな♡」
奥まで届いた魔羅を、一度引き抜かれて王様はがっかりしました。しかしすぐにまた奥へと突かれて、歓喜の声を上げました。
「あぁぁっ♡♡♡」
快楽の源にも、魔羅の雁部分が引っかかって気持ち良いのです。
まるで、王様のためにあつらえたような形をしている魔羅でした。
武官は、何度も抜き差しを繰り返しました。
「あぁっ♡ あんっ♡」
そのたびに王様は感極まった声を上げます。
「そろそろ、真の快楽を教えて差し上げます」
武官は言って、奥のほうに挿れた魔羅をぐるりとまわすように腰を動かしました。
「ひんっ♡♡♡」
そうすると切ない場所がえぐられるようで、王様はひんひん泣きました。
泣くほどの快楽など初めてで、どうしたら良いかわかりません。
「もう♡ らめら♡ 気を♡ 気をやりたいっ♡」
「良いですよ、王様。ぞんぶんに気をおやりになってください」
「ひぃん――――――っ♡♡♡♡♡」
武官がいっそう奥をえぐると、王様の目の前でぱちぱちと火花が散り、雷に打たれたように硬直しました。
快楽が全身を貫いているのです。
言うことを効かなくなった四肢がびくびくと痙攣しました。
長い長い快楽に、頭の中が真っ白になって気を失ってしまいました。
気がついた頃には、武官が横で王様の頭を優しく撫でていてくれました。
その温かい手と、凛々しい顔立ちを見て、王様は胸の奥がきゅんきゅんと鳴るのを感じました。
それ以来王様は、武官を宮廷に召し上げ、後生大事にすることにしました。
運平を集めていたイム・スンジェ親子は、奸臣として罰せられて遠くへ飛ばされました。
王様は、名もなき武官と仲良く暮らしたそうです。
おしまい