ワンナイト

 ここはどこだ?
 俺は何をやってるんだっけ?
 急に酔いが醒めて、冷静になった。
 今の俺は裸で、目の前に誰かのちんぽがある。
 あぁ、またやっちまったか。
 酒の勢いで、昨日出会った男を食おうとしてたところみたいだ。
 やけに白い、きれいな形をしたちんぽなので、舐め続けることにする。
 そうだ、思い出した。
 こいつが舐めても舐めても勃たないから、長時間こうしているのだった。
 しかし、ようやく固くなったみたいだ。
 で、誰のちんぽだっけ?
 俺は目線を男の顔のほうに向けて、ぎょっとした。
 勃起しながら無表情で薄目を開けているのは、真っ白な美貌の男で……チェ、なんとか言う韓国人の交換留学生じゃねーか。
 名前も知らない男のちんぽをしゃぶるのは珍しくないが、捜査対象のあやしいアジア人のちんぽをしゃぶるのは初めてだ。
 困ったな、と思ったのは0.2秒くらい。
 乗りかかったちんぽだ、いただくに限る。
 寝っ転がっているチェなんとかの上に俺は乗り上げた。
 ワンナイト用にいつも持ち歩いているコンドームを、脱ぎ捨ててあったズボンのポケットから探す。あったあった。こいつはジェリーたっぷりでローション不要な優れたやつだ。それをチェなんとかのちんぽに被せ、尻の穴に捩じ込んでいく。
「う……ん」
 小さくても芯のあるような固いちんぽだ。酒の飲み過ぎかEDぎみなのか知らないが、勃起するまでに時間がかかりすぎだが、したらしたで良い具合だった。
「あ、はぁ……いいぞ……、勝手に動くからな、そのまま寝てろ」
 チェなんとかは人形かと思うほど反応しない。
 元々不気味なやつだった。交換留学生として我が国に来たわりに、目が死んでいた。普通はキラキラ輝かせて来るところだろうが。英語も完璧で、俺がイヤミを言ったら、イヤミで返してきた。酒も煙草もやるらしいので、この生意気なツラがどうなるのか見たくて仕掛けてみたのが昨日の晩だ。
 どうやらここはこいつの寮の部屋のようだった。連れ込んだのはこいつのほうか?やるじゃねーか、俺はお持ち帰りされたのか。
 思い出したら愉快になってきたので、俺は楽しい気分で腰を揺らし始めた。
「はぁっ、あっ、んっ、あっ、あっ、はぁっ」
 自分で、ナカのいいところに当てて擦る。
 ディルドでマスターベーションしているようなもんだ。
「あっ、あっ、んっ、はぁっ、はぁっ、……ん、おい、起きてるか?」
 一応確かめて見ると、今度は反応した。
 チェなんとかは今起きたように髪をかきあげて、目を瞬かせた。
「ファックしてんの、わかってるか?」
「……あぁ」
 短く答えて、こいつは上半身を起こし、対面座位になったかと思うと急にやる気を出し始めた。つまり、腰をがむしゃらに動かして、俺の奥を突き上げたってことだ。
「あはっ、あっ、えっ? なっ、なんっでっ、急にっ、あぁっ」
 まるで盛りのついた野獣のように変身したチェなんとかは、勢い余って俺を床の上に押し倒し、ガツガツ突いてくる。
「あぁっ、やっ、もうっ、クるっ、きちゃうっ、おぅっ、カモン! あぁぁっ」
 俺は勢いに飲まれるようにナカでイッた。
 ぞくぞくと背中を震わせ、びくびくと痙攣する。
 頭の先からつま先まで電流が走ったような絶頂だった。
「……はぁ、……シッバル!」
 チェなんとかは眉間にシワをよせ、母国語で何か吐き捨てながら射精した。
 

「ははは、やっちまったもんは後悔すんなよ」
「……うるさい」
「なかなか良かったぜ」
「うるさいって言ってるだろ」
 コンドームに溜まった精液をゴミ箱に捨てた後、チェなんとかは頭を抱えていた。
 よほど後悔しているらしい。
 自分の服を手繰り寄せて煙草を探し、苛立たしく火を付ける。
「俺も一本くれよ」
 そう言うと、イヤそうに煙草を差し出した。
「サンキュー」
 火をつけてくれて、こいつ、俺に惚れてんじゃねーのかな?と思った。
 だって体の相性が抜群だった。
 俺はあんなふうにガッつかれるのが大好きだ。最高に気持ちよくイケた。
 こいつはどうだったのかな、と思って見ると、いつも真っ青な頬が火照ったように赤くなっている。満足そうなところを見ると、まんざらでもなかったらしい。
「なぁ、また俺と寝るか?」
「二度としない」
「またまたぁ」
 俺達はその日吸った煙草の旨さを覚えている。

おしまい

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