ハッピーエンド

 激しいセックスのあと、うとうとするわたしを、ハン理事は隣で楽しそうに眺めていた。
「すいません……眠くて……」
「いや? 好きなときに眠っていい。朝まではまだ時間がある」
 ハン理事はそう言ったわりに、話を続けた。
「なぁ、俺が何者かに脅迫でもされたらどうする?」
 いきなり物騒なことを言い出すので驚いて目が醒めてしまった。
「そんな恐れがあるんですか!?」
「ないから心配するな。あくまで仮定の話だ」
「はぁ……」
 わたしは困惑しながら答える。
「そんなことが起きたら、犯人を撃ち殺します」
 ハン理事はつまらなそうな顔をした。
 正解の答えは何なんだろう。
「じゃあ、俺が何者かに襲われたら?」
「同じです、撃ち殺します」
「相手が強くて敵わなかったら?」
「……それは、困ります」
 そう答えると、ハン理事は、かすかに目を輝かせた。
 正解に近いようだ。
「俺が殺されたら?」
「わたしも死にます」
 すると、ハン理事は嬉しそうに微笑んだ。
 これが正解だったらしい。
「俺と一緒に死にたいのか?」
「死ぬのはイヤですが、ハン理事と一緒なら良いです」
「そうか、良いか」
 ハン理事は目を細めて、わたしに体を寄せる。
 毛布の下で、脚を絡ませられた。すべすべの肌が心地よい。
 わたしはハン理事の腰に手を回して、背中を撫でた。
「ハン理事は、それで良いのですか?」
 不思議に思って尋ねる。
「あぁ、おまえと一緒なら、それは良いな」
 そう言って、わたしに全身でひっついて目を閉じた。
 今夜は抱き合ったまま眠る気分のようだ。
 何でこんな不吉な話題を出したのだろう。
 訳がわからないが、ハン理事はなぜか幸せそうな笑みを浮かべてうとうとしている。
 わたしは、逆に目が冴えてしまったので、その寝顔をじっと見つめる。
 あぁ、でも、万が一わたしたちが一緒になれる方法があるとしたら、一緒に死ぬことだけだな、と思い、それが良いと言うハン理事をいとしく思った。

おしまい

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