夕飯にえびとトマトソースのパスタを作っている間、ヒョンスがスミンの宿題を見てやっていた。
「スミナ―。ヒョンスや。ごはん出来たぞ」
盛り付け終わって二人を呼ぶと、子供部屋からスミンが飛び出してきた。
「アッパ! ヒョンスおじさんにことわざ辞典を買ってあげて!」
いきなりそういわれて何のことかわからなかった。
ことわざ辞典だと?
「なんだ? ヒョンスは大人だから、ことわざじてんはひつようないと思うぞ?」
「でも、ヒョンスおじさんに聞いてみればわかる……」
「どういうことだ?」
俺は首をかしげると、部屋からヒョンスも出てきた。
「スミナ、いきなり飛び出してどうしたんだ?」
ヒョンスも不思議そうにたずねる。
俺は、スミナの言うとおりにした。
「ヒョンスや、隣の家の芝は?」
「なんですか? ことわざクイズですか? 隣の家の柴はかわいい」
柴じゃない。芝だ。隣の家の芝は青い、だ。
「漁夫の?」
「漁夫の海苔」
海苔じゃない、漁夫の利だ。わざとやってるのか?
「出る杭は?」
「出る杭は抜かれる」
出る杭は打たれる、だ。これは天然なのか?
「……なるほど! スミンの言うとおりだな」
俺は困惑した。
ヒョンスほど完璧な男はいない。国際線パイロットとして、頭脳も体力も申し分ない。おまけに顔が良くてスタイルも良いときている。この男に欠点があるとしたら何だろう、と考えたことはあったが、これだったのかもしれない。
「ヒョンスや、学生時代、国語の成績はどうだったんだ?」
「さぁ、ずっと理系なので気にしたことがないですね」
「そうか……」
ヒョンスのさらっとした答えに、俺は頭を抱えた。
間違いを指摘するのは簡単だ。しかしヒョンスはショックをうけるだろう。落ち込むかもしれない。それはかわいそうだ。
それに何より。
か わ い い。
とてつもなくかわいい面を見つけてしまった。
恋人のこんな欠点を知って、嬉しくない男などいないだろう。というか、ムラムラする。
「んー……、かわいいから優勝!」
顔を上げてそう言うと、ヒョンスはぽかんとし、スミンは目を丸くした。
「アッパ!」
「どうしたスミン。ヒョンスおじさんはかわいいだろう?」
「……う、うん」
「さぁ夕飯にしよう。おいしいパスタを作ったぞ。ごはんを食べて、風呂に入って、今夜はぐっすりだ」
「アッパ達、またプロレスごっこするの?」
スミンが聞くので、ヒョンスは大きく咳き込んだ。
「プロレスごっこ?」
「夜にベッドの部屋でどったんばったんしてるの、プロレスごっこって前にアッパが言ってたじゃない」
「あぁ、そうだったな。うん、今夜もいっぱいプロレスごっこするぞ」
そう答えたら、ヒョンスはじろりとこちらを睨んでいた。
うーん、そんな顔もかわいい。今すぐ押し倒してしまいたい。
その衝動を我慢して、三人で夕食の席に着いた。
楽しくごはんを食べて、順番に風呂に入って、スミンは子供部屋に一人で寝に行った。
これからが大人の時間だ。
「どうした、ヒョンスや。心配そうな顔をして」
するとソファに座ったヒョンスは上目遣いに俺を見て言う。
「スミンに俺たちの関係を知られた気がします」
「今さらか?」
「今さらって、ジェヒョクさんはいいんですか? 父親が男の恋人を連れ込んでいるのを娘が知っても」
「構わないよ?」
そう言ったが、この話題はヒョンスとぶつかるのが常だった。俺はなるべく彼を刺激しないように言った。
「スミンだって、大人になったら自然と気が付くさ。偏見を持つ子に育ってほしくない。人が愛し合うのは自由だって知っている大人になってほしいんだ」
「……はぁ」
ヒョンスは何か言いたそうだったが、口をつぐんだ。ただ困ったように眉をひそめ、みるみる顔が赤くなっていく。
「ただ俺は、その、恥ずかしくて」
両手で顔を覆って、絞り出すような声で言う。
か、かわいい。
もうスミンは寝たのだからいいだろう、と俺はそんなヒョンスを両腕で抱きしめた。
「ヒョンスや。ベッドへ行こう。今すぐおまえとTake offしたい」
「またそういうこと……!」
ヒョンスは赤い顔を俺の肩にすりすり押し付けてきた。
「はぁっ♡ はぁっ♡ あっ♡ や♡ これっ♡」
ベッドの上、ヒョンスを腕の中に閉じ込め、腕立て伏せの要領でお互いの勃起したちんこを擦り合わせていたら、ヒョンスは泣きそうな声を出した。
「いやか?」
すかさず聞くと、彼はためらいがちに首を横に振る。
「ん♡ いいっ♡ よすぎて……っ♡♡」
「はは、かわいいな」
大胆に腰を揺らすくせに、恥じらうところがたまらなくなった。俺はちんこを二本いっぺんに片手で掴むと、上下に扱き始めた。お互いの我慢汁がぬめって、ちゅくちゅく音を立てる。
「あっ♡ あっ♡ イッちゃう♡ イッちゃう♡」
ヒョンスは切ない声で訴える。
「イッていいぞ」
やさしく促したが、ヒョンスはまた首を横に振る。
「やだっ♡ 機長のちんぽ入れてほしっ♡」
「そうか、じゃあ……」
どこまでもかわいいことを言う恋人の脚を開いて、準備万端のおしりの穴に直接ちんこを突き立てた。
「あっ♡ んっ♡ んぅっ♡」
ゆるゆる動かして最初は様子をうかがったが平気そうなので、俺は激しく動くことにした。
「高度を上げるぞ!」
「あぁっ♡ あっ♡ あっ♡ あーっ♡♡」
勢いをつけて腰を打ちつける。ヒョンスは自分でも腰を動かしてリズムを合わせながら快楽を貪っているようだった。
俺も気持ちよさにうっとりしながら、ヒョンスにたずねた。
「副操縦士、割れ鍋に……?」
「……?」
「ヒント、のせるものだよ」
「……割れ鍋に落し蓋!」
「うっっ」
かわいい。俺は興奮のあまり射精した。
「あっ♡ はぁっ♡ あ――――っ♡♡♡」
ヒョンスもつられるようにナカでイッた。
ピンと脚を伸ばして硬直したかと思うと、ガクガク震えて、心配になる。
けれどこれが最高に気持ち良いらしい。
俺は、イッている最中のヒョンスを抱きしめながら、幸せを噛み締めた。
おしまい