えっちなお兄さんは好きですか?その2

 今夜は夜勤の日だった。
 数名だけハン理事の邸宅をガードする。しかし夜は平和なものだ。裏の世界まで知れ渡っているハン理事の邸を襲いに来る奴などいやしない。
 わたしは室内で、ハン理事の一番近くをお守りする。
 こんな夜は、あの日を思い出す。あさましいことに、あれからハン理事のあられもない姿が頭にこびりついて離れない。
 しかしハン理事のほうは、とくに特別な一夜ではなかったのか、あれからもいつも通りに仕事をし、気に食わない奴をわたしたちに始末させ、悠々自適に過ごしている。
「はぁ……」
 わたしは仕事中にもかかわらず、切ないため息をひとつ落とした。
 ふと、壁に飾られた時計を見て気がついた。
 ハン理事が風呂に入られてから、一時間半以上経っている。ふだんはそんなに長風呂な人ではない。よもや、と思い、脱衣所のドアを開けた。
「ハン理事! 大丈夫ですか!?」
 脱衣所といっても、邸宅の中はどこも広い。曇ガラス一枚を隔てて、もっと広い風呂場がある。そこへ向かって呼びかけると、中からだるそうな声が聞こえてきた。
「ん……大丈夫じゃない……」
「えっ!?」
 わたしは驚いて、迷いなくガラスの扉も開けた。
「失礼します! 何があったのですか!」
 中へ一歩踏み出すと、バスタブに浸かっている理事の姿が目に飛び込んできた。その顔は真っ赤で、汗をかいている。
「……のぼせた……」
「!!!」
 わたしは急いで脱衣所からバスローブを手に取り、立ち上がろうとするハン理事の肩にかけた。
「立てますか?」
「あぁ」
「ソファまで行きましょう」
 肩に腕を乗せ、ハン理事の体重を預かって歩く。
 リビングの長椅子のところまで行って、横に寝かせた。
 部屋のエアコンを入れ、夏に時々使うウチワを持ってきて傍らからあおぐ。
 ハン理事はぐったりとしていて、赤い顔をして目を閉じている。
 懸命にあおぎながら、その姿を可愛らしいと思ってしまった。
 いけない。仕事中なのに。ハン理事が苦しそうなのに。
 唇を噛んで自分を戒めていると、ハン理事は薄目を開いた。
「……おまえ、か」
 彼はわたしを認識して、また目を閉じた。
「考え事をしていた」
「のぼせるほどの難題がございましたか? わたし達に命じてくだされば……」
「くそっ、おまえのことだ」
「えっ」
 わたしは思わず聞き返してしまった。
「おまえのでかいちんちんが忘れられない」
「は…………」
 それでもさらに耳を疑った。
 今、理事はちんちんと言ったか?
 この人、ペニスのことをちんちんて言うんだ……! かわいすぎる……!!!
 大事な主旨よりそっちが気になってしまった。わたしのデカマラが反応してしまう。
 なんてことだ、仕事中なのに。
 いや、そんなことより、今理事はなんと言ったっけ?
「そんな……まさか……」
「まさかで悪いか? おまえが悪いんだぞ! 責任を取れ!」
 これは、殺されるのだろうか。それとも誘われているのだろうか?
 ええい、ままよ。どのみち殺されるなら、欲望に素直になったっていいだろう。
 わたしはバスローブ姿の理事を両腕で抱き上げた。お姫様のように抱きかかえられて、ハン理事はぎょっとしたような顔をした。しかし構わずわたしは寝室へ向かって歩き出す。
「責任を取らせていただきます」
 そう言うと、それが無事、正解だったようで、ハン理事は悪くないという笑みを浮かべ、わたしの首に腕を絡ませた。

 広いベッドの上にハン理事をそっと降ろして、上から覆いかぶさるように唇を顔にちかづけると、ふいと顔をそむけて避けられてしまった。
「……失礼しました」
 失敗した。
 いくら体を求められているとはいえ、くちづけは不要だったようだ。
 恐る恐るハン理事の様子をうかがえば、とくに怒ってはいないようだ。
「ローションとゴムならその棚にある。好きに使え」
 そう言った。
「はいっ」
 わたしが急いで服を脱ぎ、ローションとゴムを取ってくるのを微笑んでいるような表情で待っていてくれた。
 ホッとした。良かった。
 体だけでも求められて光栄じゃないか、と自分に言い聞かせ、もう一度ベッドに戻ると、さっき躱された唇で首の付け根に吸い付きながら、バスローブの紐を解いた。喉元から鎖骨のあたりに吸い付きながら、薄い色の乳首を指の爪で引っ掻いた。
「んっ♡」
 ハン理事は喉の奥で小さな声を挙げる。
 感じやすい人だ。
 まだ柔らかい乳首の先を指の腹でこねくりまわす。
「んっ♡ あっ♡」
 そうするうちに次第にそれは固くなって赤みが増す。
 もう片方も弄り始め、両側の乳首を執拗に捏ね、つぶすようにすると、ハン理事はもどかしそうに裸の腰をくねらせた。
「は、ぁ♡ そこばっかりいじるな」
「はいっ」
 わたしは名残惜しそうに乳首から手を離し、体を下へずらした。
 細い腰を手のひらでさすりながら、もう勃ちあがっているハン理事のちんぽにもう片方の手で触れる。きれいな形をしていて、なんの嫌悪感もない。それどころか、たっぷりかわいがって差し上げたくなる。
 やさしく根元を扱きながら、雁首のあたりを撫で回していると、先っぽから先走りが垂れてくる。わたしはそれを指ですくい上げ、鈴口に塗り込むようにして差し上げた。
「あ♡ あー♡」
「気持ち良いですか?」
「ん、あぁ」
 まだハン理事は正気を保っていて、快感にうっとりしている。
 こないだは薬を盛られていたとはいえ、みだらに乱れていた。また、そんな理事を見たい。ドロドロに蕩けさせたい。そんな気持ちで、大きく脚を広げさせた。ローションを指に絡みつかせてから、ハン理事に腰を高く上げていただき、薄く小さな尻のあいだに指を差し入れた。柔らかな粘膜にそっと触れる。
「あっ♡」
 指の腹でくるくると撫でるようにローションを粘膜に馴染ませ、しだいに沈めていく。
「あっ♡ んっ♡ はぁっ♡」
 傷つけたくないので、慎重に根元まで指を沈め、二本に増やし、ナカの温かい締付けを感じながらあちこち動かしてみた。
「あぁっ♡ あっ♡ んく♡ あ♡」
 ハン理事はこみ上げる快感をこらえるように、両手で自分の髪をかきむしる。眉間のシワが愛おしい。こうされるときの癖なのだろうか。
 なんとなく他の男の存在を思い浮かべ、わたしは嫉妬にかられた。
 片方の手で尻のナカをかき回しながら、もう片方の手でちんぽを同時に弄んだ。
「あっ♡ バカ♡ 両方、はっ♡」
「ダメですか?」
「い♡ いいっ♡ きもちいっ♡」
 許可を得て、わたしは愛撫の手つきを激しくした。
「い♡ イクっ♡ イク♡ ぅ♡」
 ハン理事は背中をしならせ、ちんぽから精液がぴゅるぴゅる飛び出した。
「あぁ……♡」
 満足そうな息を吐く。
 ハン理事が、わたしの飼い主があられもなくイク姿を見て、わたしのデカマラも限界だった。
「ハン理事、失礼いたします」
 わたしはハン理事の尻の穴を壊さないようにゆっくり押し入った。
 一度根元まで全部入れてから、またゆっくり引き抜く。ぎりぎりのところで、突き刺すように腰を動かした。
「あぁっ♡」
 その衝撃をこらえるために、またハン理事は自分の髪を触ろうとしたので、俺はその手を掴んだ。
「…………?」
「手はこちらを掴んでいてください」
 と、言って、わたしの背中に手をまわさせた。
 そして反応を待たずに、抱き合う体勢で遮二無二腰を動かした。
「あぁぁっ♡ あっ♡ あぁっ♡ はぁっ♡ あっ♡ あんっ♡ あんぅっ♡ あっ♡」
 ハン理事とは体の相性がいいようだ。ナカの締付けとうねりは最高で、わたしを射精に向かわせようとする。それに負けじとわたしも腰を動かす。奥まで貫いては、ナカをえぐるようにした。
「あぁぁっ♡♡♡」
 そうするとハン理事は感極まった声を上げる。
 よっぽどイイらしい。
 わたしも、まるで天国にいるようだった。
 真正面から抱き合いながらするセックスは最高だ。
 それもまさかハン理事と……と顔を見ると、目をぎゅっと閉じて凛々しい眉を寄せて喘いでいる。その半開きの口の中から舌がのぞいていた。まるで、くちづけを求めるように。
 いやいや、さっき躱されただろ? やめておけ。
 わたしの心のなかで天使と悪魔が口論を始めた。
 でも、どう見てもくちづけをしたがっているように見えるぞ。
 だめだ、今度こそ嫌われたらどうする!?
 しかし理性が飛んでいたわたしは、悪魔の誘惑に負け、吸い込まれるように唇を重ねてしまった。
「!!!」
 ハン理事は驚いたように目を見開く。
 くそ、してしまったものはどうしようもない。
 こうなったら全部奪ってやる。
 そう思って、重ねた唇の隙間から舌を差し入れ、ハン理事の口の中をべろべろ舐め回した。
「!!!!!」
 上顎を舌先で撫でると、ハン理事はぞくぞくと背中を震わせて、さらに俺にしがみついてきた。
「……んっ♡」
 甘い声が鼻を通って漏れ聞こえたとき、調子に乗って、舌同士を絡ませ、すりすりとこすり合わせた。口ひげが当たるのがそれさえも刺激になる。
「んっ、んふ」
 甘い声が聞こえて、わたしの腰は止まらなくなっていた。
 ガツガツ腰を穿つと、ハン理事も舌を絡ませて、わたしの背中にしがみつく。
 くちづけしながら抱き合ってするセックスが最高なことを、理解してくれたようだ。
「んー♡ んっ♡ んぅっ♡ んーっ♡♡♡」
 お互い、口から唾液があふれるほど激しくくちづけして、獣のように腰を振った。
「ん♡ イク♡♡ ん♡ あ♡ だめだ♡ あ♡ あーっ♡♡♡」
 ハン理事はナカの衝撃でメスイキした。
 その瞬間の締付けに、わたしも耐えられなかった。
「うっ」
 ゴムの中に射精した。
「はぁ……」
 ぐったりとハン理事の上に倒れ込む。と、かわいらしいちんぽが目に入ったので、それを掴んだ。
「あっ♡」
 ハン理事は悲鳴のような声を上げた。
「待て、まだイッてる最中だっ」
 叱る声を無視して、飼い犬は暴走してしまう。ちんぽをやさしく扱くと、ハン理事は、ガクガクと痙攣して強すぎる快楽を持て余した。
「ひぁ♡ あ♡ あぁーーーっ♡♡♡」
 長い絶頂を極めて、すぅっと気を失ってしまった。

「大変申し訳ございませんでした!!!」
 土下座をするわたしに、ハン理事は少し恥ずかしそうな表情でつぶやいた。
「あれは、もうやめろ」
「は、はいっ、くちづけは二度といたしま」
「そっちじゃない、イッてる最中に触るほうだ。気がおかしくなる」
「えっ」
 俺は純粋に驚いた。
「では、くちづけはいたしてもよいのでしょうか……?」
「聞くな」
 ハン理事は耳を赤くして顔だけ横を向いてしまった。
「は、はいっ、かしこまりました!」
 わたしは天にも昇る気持ちになった。
「それより、まだ時間はあるか?」
 ハン理事は横を向いたままたずねたので、わたしはぶんぶんと縦に頭を振った。
 外で警備をしている仲間には申し訳ないが、断る理由などなにもない。
「その、でかいちんちんはまだ元気か?」
 わたしのデカマラをちんちんと呼んでくださる愛しい理事にわたしは感激した。
「もちろんでございます!」
「それじゃあ……」
 今度はこちらを向いてくれた理事は、少し唇を傾けて、薄い唇をわたしの唇に押し付けてきた。それに噛みつくように応じ、それからわたしはまた朝までかかってハン理事を抱き潰したのだった。

おしまい
 
 

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