ジェヒョクの家の廊下に、大量の紙の束が積み重ねられていた。家に上がる際、目についたそれについて俺はたずねた。
「なんですか、これ」
「あぁ、古いものを全部処分しようと思って」
「古いもの……」
注意深く見ればそれはかつてスカイコリアが配布していた広報用の雑誌類だった。
「よくこんなに取ってありましたね」
「物持ちがいいんだ、俺は」
ジェヒョクはなぜか自慢げに言うので可笑しかった。
俺は一番上に置いてあった雑誌を手に取って、パラパラとめくった。
「うわぁ、ほんとに古いですね」
キャビンアテンダントの写真がたくさん載っているが、制服が今とは違うものだった。
二十年くらい前の時代だろう。
「捨てちゃうんですか? むしろ貴重なもののような……」
「そう言ってるからいつまでたっても捨てられないんだ」
ジェヒョクは自分に言い聞かせるように言った。
俺は、なるほど、と呟いてまだ雑誌に見入っていた。
何世代も前の飛行機の機体も写っている。じんわりと懐かしさが込み上げてくる。
空の旅に誘うようなキャッチコピーと文章を読んでいると、はらりと一枚の写真が床に落ちた。雑誌に挟まれていたようだ。
「…………?」
拾って、その写真を数秒眺めた。何が映っているかすぐには頭が理解できなかったからだ。
「どうした? 何を見て……あ!」
慌ててジェヒョクが写真を奪い取ろうとしたので、俺は身をかわした。
「なんでそんな写真を……」
「ここに挟んであったんですよ。これ、あなたですよね?」
「う……」
ジェヒョクは目をそらしてとぼけた。
答えなくても構わない。写真に写っているのは若いころのジェヒョクだ。見ればわかる。
裸でジェットバスに浸かって、まわりにはやはり裸の美女を数人はべらせている。
ハリウッド俳優じゃあるまいし、いったいどういうシチュエーションなんだ。
「不良パイロットめ」
俺がぼそっと呟くと、ジェヒョクはびくっと肩を震わせた。
昔のジェヒョクがかなり遊び人だったことは当時も噂で聞いていた。そりゃあパイロットで容姿端麗とくればさぞかしモテるだろうとは思っていたが、こんな遊び方だったとは。
結婚前から妻一筋だった俺としては、信じられない。
軽蔑の眼差しをジェヒョクに向ける。
「待ってくれ、昔のことだろ?」
ジェヒョクは謎の言い訳をしようとする。
「スミンが生まれてからは真面目になったんだ」
「へぇ、そうですか。俺には関係のないことですけど」
俺は冷たく言い放った。
昔のことだとわかっているが、なんだかムカムカする。
「今日はやっぱり帰ります」
「えっ」
来たばっかりだったが、身をひるがえして、玄関に背を向けた。
「この写真はスミンの目に入ったら情操教育に悪いので俺が処分しておきます」
「ヒョンスや~。怒るなよ~」
「怒ってません」
「怒ってるだろ。ほっぺ膨らませて。かわいいなぁ」
「膨らませてません。帰ります」
「帰るなよ~」
靴を履こうとする俺に、ジェヒョクは後ろから抱き着いて引き留める。
頬をくっつけてすりすりしてきた。
俺は焦った。
「こんなとこでそういうことして……スミンに見られたらどうするんですか」
すると、ジェヒョクは答えた。
「今日、スミンは友達の家に泊ってくるんだ」
「えっ」
「だから今夜は二人っきりだ。不愉快な気分にさせたお詫びに、たっぷりご奉仕させてくれ」
ジェヒョクは後ろから耳元に低い声で囁いた。
「ご奉仕……?」
俺は思わず顔をあげて、ごくりと唾を飲み込んだ。
キスは好きだ。頭の中がぼうっとなって、わけがわからなくなる感じがいい。
キスをしながら服を脱ごうとシャツに手をかけたら止められた。
「言っただろう。今日は何もしなくていいよ。俺が全部してあげる」
そう言ってジェヒョクは俺の服を脱がせにかかった。時々キスに戻るから、なかなか時間がかかってしまった。俺はされるがままになっていた。
俺を裸に剥いてベッドに転がしておいて、ジェヒョクはさっさと自分の服も脱ぎ捨てた。
裸で抱き合うのかと思いきや、彼は足元にうずくまって、俺の足を取り、足の指を口に含んだ。
「うわっ、何するんだ。汚いだろう!」
「汚くなんかないさ。むしろおまえは潔癖なところがあるくらいだ」
「~~~~っ」
足の指を一本一本しゃぶられて、俺は腰を震わせた。
ふと、ジェヒョクはこうやって女も大事に大事に抱くのだろうかという疑問が湧いてきた。やっぱりむかむかする。
足の指を舐めた後は、ふくらはぎや膝にキスをくりかえした。
男の脚なんか面白くもないだろうに。
ジェヒョクはふとももをキスしたり甘噛みしたりしてだんだん上に上がってくる。
俺のちんぽはそれだけで軽く勃っていたし、早く触って欲しくて期待に高ぶっていた。
さんざん焦らした挙げ句、ジェヒョクは俺のちんぽを掴み、数回手で扱くと、先端に口をつけた。鈴口を舌先で抉るように舐める。
「あ、あ」
俺は枕を顔に当てて、むずがゆい快感をこらえる。
「こら、顔が見えないだろ」
ジェヒョクはそう言って枕を取り上げてしまった。
「あ……俺なんかの顔を見ておもしろいですか」
「おもしろくはないが……興奮する」
率直に言われて、背筋がぞくぞくした。
「おまえの生真面目な顔が、だんだん快楽に飲まれていくのがたまらん」
「その言い方、オヤジくさいですよ」
「しょうがないだろ、オヤジなんだから」
開き直った彼は、俺のちんぽを深く咥えた。じゅぶじゅぶと音を立てて吸う。
「あっ♡ あ♡ あっ♡」
耳をふさぎたいくらい恥ずかしいが、気持ちよくて声が出てしまう。
「今夜は二人きりだから声を押さえなくてもいいんだぞ」
あっそうか、と思い出したが、だからといってあけすけに声を上げるのは憚られる。
「んっ♡ んんっ♡ あ♡」
「素直じゃないな」
ジェヒョクはさらに声を出させようと、裏筋を舌で舐め擦る。
「あっ♡ あぁ♡♡」
「お、いい調子だ」
彼は上機嫌で言って、ちんぽから口を離し、会陰を舌でくすぐる。
「……ふ♡ うぅ♡」
そのまま、尻の穴にも舌を這わせた。
「あ! そこは……!」
恥ずかしさに消え入りたくなる。
皺のひとつひとつを伸ばすように、そこを広げられる。しだいにほぐれた穴の中へ、ジェヒョクの舌が入ってくる。
「あっ♡ だめ……っ♡ あ♡ あぁっ♡ あんっ♡」
浅いところを舌でぐにぐにと広げられ、俺は身も世もなく喘いだ。
恥ずかしい。でも気持ちいい。
「あ♡ んっ♡ あぁっ♡ ……もっとぉ♡♡」
俺は耐えきれずジェヒョクを求めた。
浅いところを掻き回されるだけでは足りないのだ。
「もっと、何が欲しい?」
「……機長の♡ おっきいのください♡」
「遊び人のちんぽはイヤじゃないのか?」
「……いじわるですね」
俺は口を尖らせて言い返した。
するとジェヒョクは楽しそうに笑った。
「うそだよ。かわいーなぁ、もう。おまえが音を上げるまでハメてやるよ」
ジェヒョクは獣じみた顔つきになって、舌なめずりをした。
食われそうだ。
俺は喜んで身体を差し出す。
「はや……く♡ もういいから♡ 挿れてくれっ♡」
「了解、副操縦士」
ジェヒョクは態勢を整え、俺の脚を肩にかつぐようにして、ちんぽの先っぽを尻の穴に押し当てた。
「あ……♡ あ♡ あ♡ 入ってくる♡♡ 機長のちんぽが入ってくるぅ♡♡♡」
「……く、狭……っ」
ジェヒョクはちんぽを慎重に根元まで入れた。
「動くぞ」
そう言ってからは逆に、激しく出し入れを始めた。
ぎりぎりまで引き抜いて、一気に奥を突く。
「あっ♡ あっ♡ あーっ♡ ぁっ♡ あんっ♡」
俺もその動きに合わせて腰を動かしてしまっていた。
奥を突いたときに揺さぶられるのが気持ちいい。
「あっ♡ あんっ♡ あぁ♡ あっ♡ あっ♡」
思いっきり声を出して、ジェヒョクの首にしがみついた。
「あっ♡ いいっ♡ そこいいっ♡ あっ♡ 機長♡」
「ここだろう? 副操縦士の好きなところはわかってるよ」
弱いところをぐりぐり突かれて、俺は喉を反らして喘いだ。
「あっ♡ あーっ♡ あぁ♡ ひ♡ イクっ♡ もうイクっ♡♡」
俺は早くも音を上げて、限界を訴えた。
「一緒にイこう、副操縦士」
そう言ってジェヒョクは俺の腰を両手で固定し、いっそう勢いよく奥を突いた。
「あぁーっ♡ イクっ♡ イッちゃう……♡♡♡」
俺は悲鳴にも似た声を上げて、絶頂を迎えた。
身体が硬直し、時々びくびく痙攣する。自分の身体が自分ではコントロールできなくなる。
こういう時、ナカでぎゅうぎゅうちんぽを締めつけているらしい。
自分ではわからないけれど、ジェヒョクが苦しそうに呻く。
「うっ」
少し遅れて、ジェヒョクも俺のナカで射精した。
びゅるびゅる熱いものが溢れてくる。
長い絶頂の中で、俺は満たされる感覚にうっとりしていた。
いくら広い風呂でも男二人じゃ無理だと言ったが、あまりにジェヒョクが懇願するので、結局二人で入ることになった。スミンがいないとやりたい放題だ。
一緒に湯舟に入りながら、ジェヒョクは言った。
「いやぁ、副操縦士にヤキモチ焼いてもらえるなんて気分がいいなぁ」
俺は呆れた。
「喜ぶことですか」
「だって、それだけ愛されてるってことだろう? そりゃあ喜ぶさ」
億面もなく言うジェヒョクに、俺は赤くなって何も言えなくなり、お湯の中にぶくぶく沈んだ。
おしまい