今日のハン理事の予定は、日本料理屋でお父上が懇意にしている政治家との会食だった。
高級料理店での外食の場合、わたし達ハン理事の部下は通常、個室の外で待機しているのだが、今回はハン理事から、個室の中にいてくれ、と言われていた。だからわたしは入口の付近に立っていたのだが、なぜハン理事がそうおっしゃったのか、だんだんわかってきた。
だいぶ高齢の政治家は、わざわざハン理事の横に並んで座っている。
そしてしゃぶしゃぶの肉を鍋でしゃぶしゃぶしながら、左手でハン理事の太ももをさすっている。
あからさまなセクハラじじぃだ。
それでも咎めるわけにはいかない相手なので、ハン理事は虚無顔で食事をしていた。
私はその様子を黙って見ているしか出来ない。
腸が煮えくり返ってどうかなりそうだ。
ハン理事は年上の男に気に入られることが多く、こういうことはたまにある。
以前も、いかがわしい薬を盛られたことがあった。
その時は、私達がそばにいなかったので、ハン理事は自力で逃げ出してきたが、そういうことがあったので今回は個室の中にいろと命令したのだろう。
私が睨みつけているにもかかわらず、厚顔無恥なじじぃはハン理事に顔を不必要に近づけて、どれだけハン理事のお父上と仲が良いかを語っている。
虚無顔のハン理事は、黙って焼酎を口に運んでいた。
悔しい。
相手が地位の低い男だったなら、速攻張り倒すのに。
ハン理事がされるがままに我慢していた甲斐もあり、食事はデザートまで終わり、あとは頃合いを見て帰るだけ、となった。ハン理事は早く帰りたそうにそわそわしている。
ところがセクハラじじぃは、店員を呼びつけて命じた。
「わしが持ってきた酒を出してくれ」
じじぃが語るには、最近ドイツに行ってきたので、土産に買ってきた貴腐ワインだという。確かに貴腐ワインはデザートに向いているので、不思議ではないが、なにかあやしい。
店員が小さなグラスにワインを注いで、個室から出ていった。
セクハラじじぃはハン理事と乾杯をして、グラスに口をつける。
が、注視していると、飲んだふりをして飲んでいない。
これは、何かある。
「ハン理事!」
私は迷うより早く体が動いていた。
ハン理事が口をつけそうになったグラスを奪い取り、代わりにわたしが煽って飲んだ。
これが変な薬の入った酒なら、飲んだほうが証明になると思ったからだ。
ハン理事はぽかんとして、セクハラジジィはワナワナと震えていた。
わたしの体の変化はすぐに表れた。
視界がぼやけて歪んだかと思うと、足元に力が入らなくなった。
「ハン理……事……」
「おい、どうした?」
「この無礼者が!」
二人の声が同時に聞こえたが、意識はそこで途切れたのだった。
次に意識が戻った時は、ベッドの上だった。
目の前に、ハン理事の顔があった。
「あ…………」
声を出そうとしているのに、うまく喉から出ない。
「目が醒めたか!?」
わたしはかろうじて肯いて答えた。
「良かった。心配したぞ」
ほっとしたように言うハン理事に、ご心労をかけてしまったのだと申し訳ない気持ちになる。
目を凝らしてみれば、ここはハン理事の宿泊しているホテルの広い部屋の中で、大きなベッドの上に寝かされていた。
ハン理事もベッドの上に乗って、わたしの顔を覗き込んでいる。
「あのジジィ、問い詰めたら、興奮剤を混ぜたって白状しやがって。おまえが手を出さなかったら、俺が危うく飲むところだったんだ。おまえのおかげで助かった」
興奮剤? 意識を失うほどの?
どれだけ入れたのやら。本当にハン理事が飲まなくて良かった。そのまま飲んでたら今頃ハン理事は……と考えるとぞっとする。
というか、俺が飲んだんだっけ。
だから、なんだか体が熱いのか。
「あつ……い……」
「ん? 暑いのか? 空調を下げよう」
エアコンのリモコンを探しているのか、ハン理事がわたしから離れようとするので、わたしは精一杯手を伸ばした。
「待っ……ないで……」
引き止めると、ハン理事は不思議そうな顔をして俺を見た。
「なんだ、いつもと違うな。クスリのせいか? 大丈夫か?」
ハン理事はいぶかしむような表情で、俺の頬を手のひらで撫でてくれた。その感触が気持ちよくて、俺はうっとりと目を細めた。
「ん……きもちい……」
思ったことが口から漏れてしまう。しかもまともな言葉にならない。
それをハン理事も気づいたようだ。
「気持ちいいのか? 撫でられるのが? 他に何かしてほしいことあるか?」
「……ここに……いてくださ……」
わたしは普段ならこんなことはしないが、とっさにハン理事に抱きついてしまった。
なんだかとても心細かった。これもクスリの作用なんだろうか。
「急に甘えんぼうになったな。こんなおまえは初めて見るぞ」
「すみませ……」
「よしよし、かわまないぞ。俺を助けてくれたんだ、いい子だな」
そう言ってハン理事は嬉しそうに俺の頭を撫でてくれた。
そうされると子どもになったみたいで、恥ずかしいような嬉しいような心地がした。
「ヨシヨシ」
ハン理事はしばらく笑顔で、よしよし撫でてくれていたが、ふと真顔になった。
「……おまえ、すごいことになってるぞ」
え、とわたしもその視線の先を見る。
ハン理事が見ているのは私の股間だった。
思い切り勃起して、ズボンがはち切れそうになっている。興奮剤を飲んだのだから当然とはいえ、恥ずかしい。
「あ……」
「大丈夫だ。心配するな。こっちもヨシヨシしてやろうな?」
ハン理事は優しい声で言って、わたしの腰のベルトを外した。ジッパーを下ろすと、ボクサーパンツからデカマラがはみ出ている。
「苦しかっただろ。今、出してやるから」
ズボンと一緒にボクサーパンツを膝まで降ろされた。
恐ろしいほど張り詰めたデカマラが目の前に晒された。
いつもより大きく、血管が浮いているそれを見て、ハン理事はごくりと唾を飲み込んだ。
「バッキバキだな。クスリの効果か」
ハン理事は恐る恐る手で触れて、文字通り亀頭をヨシヨシ撫でてくれた。
「う……」
わたしはそれだけで感じ入ってしまって、短い声が出た。
「感度も上がってるのか? 恐ろしいな。いや、任せろ。俺がちゃんと責任とってやる」
さっと素早く服を脱ぎ捨て、全裸になる。なんと男らしい人だ。
頼もしい言葉どおりに、わたしの下半身にかがみこむと、舌を出してデカマラを舐め始めてくれた。根元から先っぽに向かってぺろぺろと舐めあげる。
「は……ぁ、はぁ、はぁ」
ふだんはこんなに喘がないのに、やたらと声が出てしまう。
ゆるい舌使いは気持ちが良くて、カウパーがだらだらと溢れてくる。
ハン理事はまるでそれを味わっているように、しばらく舐め続けていたが、それだけじゃ射精できないのもわかっていて、耐えられなくなってきた頃にぱくっと亀頭を咥えてくれた。そして先っぽの敏感なところを、頬の内側の粘膜に擦り付けるようにしてくれる。
「あ……、あぅ……、う……、ん……っ」
ハン理事の頬に、わたしの亀頭の形が浮き出るのもいやらしい。
ぢゅぷっ、ぢゅ~っ、ぢゅぽっ、ぢゅぽっ。
激しい音が耳も刺激する。
「ん……ふっ……あ……」
ハン理事はいつのまにか片手を後ろに回し、自分で尻の穴をいじっている。その様子がまたしてもいやらしくて、わたしはたまらなくなってしまった。
「あっ、出……っ、出るっ」
危機感を訴えた瞬間、ハン理事はいっそう強く吸った。
「あっ……、あっ」
ぢゅ~~~っぽん!
と、最後には口を離したので、わたしはあろうことかハン理事の顔に向けて射精してしまった。
「あぁっ!」
しまった、と思った時にはもう遅い。
びゅるびゅる飛び出た精液で、ハン理事の顔はべったり濡れてしまった。
「す、すみませ……!」
慌てるわたしに対して、ハン理事は落ち着いている。
「いっぱい出たな、えらいぞ」
と言って、唇についた精液を舌で舐め取った。
「うっ」
その様子を見て、わたしのデカマラは全く萎えることなく、固さを保っていた。
ハン理事はベッドサイドに置いてあったタオルを手にとって顔を拭うと、きれいな顔に戻って、こちらを見てニヤッと笑った。私の好きな表情だ。
「まだまだ苦しそうだ。かわいそうに」
表情に似合わないことを言って、わたしのデカマラを再び握った。
そしてわたしの下腹の上に跨って、腰を落としていく。
「うぅっ」
熱くて狭い肉の壁に包まれる感覚に、頭がくらくらした。
「どうした? 苦しいのか?」
「ちが……きもちくて……」
「そうか、んっ、はぁ……っ、全部入ったぞ」
「あ……すご……」
中のうねり具合にうっとりしていると、ハン理事が身を乗り出して、わたしの顔にキスを落としてくれた。
「おまえはいい子だな。いい子、いい子。よしよし」
ちゅっちゅしながら、やさしい口調で、そんなことを言ってくれる。
わたしは泣きそうなほど嬉しくなった。
「う……、ハン理事……しゅきれす」
とうとう呂律がまわらなくなった。
「かわいいな、ほんとに」
そんなわたしを見下ろして、ハン理事は目を細めて呟いた。
「今動いてやるからな。いっぱい気持ちよくなろうな」
ハン理事はそう言って、ゆっくりと腰を回し始めた。
「ふぅ……、あ……、ん……っ」
円を描くように、中でぐりぐりする。
「あ♡ はぁ♡」
ハン理事自身も気持ちが良いようで、艶っぽく喘ぎながら動いてくれる。
「あっ♡ あっ♡ んっ♡ ふっ♡ あんっ♡」
「う……ハン理事……しゅき、しゅき……」
「あっ♡ んんっ♡ かわいい♡ かわい……♡♡♡」
かわいいのはハン理事のほうなのに、理事は繰り返し言って、だんだん腰の動きを激しくしていく。
「あっ♡ あっ♡ いぃっ♡ んっ♡ あんっ♡」
「ハン理事……また……出る……っ」
「ん♡ いいぞ♡ 俺の中にたっぷり出せ♡」
「あぁうっ」
わたしは中の締付けに耐えられなくなって再び射精した。
「よくできたな♡ えらいぞ♡」
ハン理事はちゅっと唇にキスしてくれた。
わたしはだいぶ体が楽になってきたのを感じた。
「すっきりしたか? でもまだ勃ってるな。今度はどうしてほしい?」
すっかり過保護になっているハン理事に聞かれて、わたしは素直に言う。
「もっと、ぎゅっとしたい……」
今はわがままを言っても許されるようだ。開き直って正直に言う。
上半身を起こして、ハン理事を抱きしめた。
ハン理事はわたしの頭を抱えて、いっぱい撫でてキスをしてくれる。
「じゃあこのままもう一回しような?」
「はい」
対面座位で、抜かずにもう一度することにした。
この体位だと、キスしながら出来る。
わたしは口を半開きにしてハン理事にキスをねだった。
ハン理事はすぐに察して、唇を近づけ、わたしの舌を吸ってくれた。甘くとろけるような心地がする。
だいぶ回復してきたわたしは、ゆっくり腰を動かし始めた。
「あっ♡」
上下に動くのはまだきついので、揺さぶるようにして、ハン理事の好きな奥を突く。
「あっ♡ それっ♡ なん、かっ♡ いぃっ♡♡」
その不規則な揺れが良いらしく、キスどころじゃなくなってハン理事は乱れた。
「あぁっ♡ あっ♡ すごっ♡ い♡ イクっ♡♡♡」
「ハン理事、イッて、イク顔見たい」
またわたしがねだると、ハン理事は恥ずかしそうに目を閉じて、俺の肩に額をすりすり押し付けた。
やっぱりかわいいのはハン理事のほうだ。
「あんっ♡ イクぅっ♡♡ あぁぁっ♡♡♡」
ハン理事は絶頂を極めた。
俺はその顔を見ながら、三度目の射精をした。
三回じゃクスリの効果はおさまらなかった。
元々精力が強いのに、そこにわけわかんないクスリを飲んだせいで、大変なことになってしまった。
「あぁっ♡ あっ♡ んっ♡」
数えるのも止めた頃には、わたしの体はほとんど回復していた。
へとへとになっているのはハン理事のほうだった。
「うぁー♡♡ も、しぬ……しんじゃう……」
「すみません、すみませんっ」
四つん這いになったハン理事に後ろから挿入していたわたしは、申し訳ない気持ちで誤りながら、腰を打ち付けていた。
「あ♡ あぁっ♡ またイクっ♡♡ イクぅっ♡♡♡」
ハン理事は悲鳴のような声を上げて、何度もイッた。
「もう無理~」
とうとう白目を剥いて意識を失ってしまった。
わたしは最後にもう一度射精して、ようやく勃起が落ち着いた。
「大丈夫ですか? ハン理事」
寝込んでしまったハン理事を、わたしはベッドの横で見守るしかできなかった。
「あぁ……みっともない……」
つぶやく理事に、わたしは慌てて否定する。
「とんでもない! ハン理事はいつだって、美しくて、かっこよくて……その……好」
「ははは、でもおまえこそ、いつでも俺を助けてくれる、俺だけのヒーローだ」
わたしはその言葉に、どう表現したらいいのかわからないほど嬉しくなって、ただ真顔で頭を下げた。
おしまい